「ランニング王国を生きる 著者:マイケル・クローリー」(読書ノート)

「ランニング王国を生きる(文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと)著:マイケル・クローリー」を読みました。前回に引き続き、ランニング本です。

 

文化人類学、フィールドワークとは何か?ということを調べた上で本を開いてみました。すると著者自身がエチオピアで走るという環境に魅了されていることが伝わり、ランナーたちとの生活がリアルに感じらます。森や里山に行ってトレイルをジグザグ走りたくなる本です。

 

購入のキッカケ

文化人類学?フィールドワーク?世界記録の生まれる場所?なぜマラソンのトップ5の記録のうち3つをエチオピアの選手が持っているのか?タイトルと帯のメッセージをみた瞬間におもしろそう!と直感で購入しました。

 

マイケル・クローリー

著者のマイケル・クローリーは、イギリスの文化人類学者。まずは「文化人類学」について調べてみました。

 

文化人類学
自分とは異なった生活”をする人びとに魅了されて、

そこから何かを学ぼうとする学問

 

文献による研究よりも「フィールドワーク(参与観察)」という、現地に長期滞在、生活を体験してリサーチ、研究する学問のようです。

そして著者は文化人類学者であると同時に自身もマラソン2時間20分で走るエリートランナー!!この本では、15ヵ月にわたりエチオピアのランナー達とトレーニングを共にしたフィールドワークの記録となっています。

 

とにかくエチオピアのランナーたちと走るペースのレベルが高すぎます笑。

 

本の内容

ランニングチームのバスに乗ってエチオピアにある標高3000メートル以上の”特別”な場所(エントト山)で走るところから始まります。先行しているランナーたちが次々とペースを上げて集団から離れていくなかで、著者が薄すぎる酸素に意識がもうろうとし、這うようなスピードでなんとかチームバスに戻る記録は、読んでいる自分も息苦しくなります。

 

エチオピアの首都、アディス・アベバには5,000人以上のランナーがいて成功するのはごくわずか。コーチは、努力とか110%の力で走ることよりも「足を動かす前に目で見て、頭で考えるランナーが成功する」と言う。

 

そして作物の種をまく動作や踊りのようなウォーミングアップ、野原を左右にジグザグ走る風景は、1%の改善を追求するマージナルゲイン(限界利益)の考え方やスポーツ科学からとても離れているようです。

 

ランニングの神秘的な秘密、生活と経験による知恵から直観的で、創造的かつ冒険的なアプローチを著者が体験していく様子は、読んでいる自分も同じように体験しているような感覚になっていきます。

 

所感

ランニングの練習をセラ(仕事)と言うように、この本に登場するランナーは、真剣に仕事として走ることを目指す人たち。環境や競争の厳しい現実があるなかでも、ランニングに対する真摯な姿勢や想いは、強いエネルギーとして伝わってきます。

 

具体的なメニューの記載はないですが、考え方・目的をシンプルにしてやることを複雑・多様にすることは、とても興味深いです。自分のタイムを上げることを「修正」と表現するなど、エチオピアランナーのランニングに対する感覚は分かりやすく、思わず練習ノートに書き出してしまいます。

 

登場人物の一人、ゼレケのようにトレイルをどれだけゆっくり走れるかを確認するためにGPSウォッチを使ってみたいです。(妻のハイキングペースに合わせて自分は、ゆっくり走る)

 

前回の「本当のランニング」に続いて、走ることの意欲を高めてくれる良い本でした。

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